お仕事のヒント

10分で描いている絵は、10分で描いていない。

こんにちは、似顔絵師のぜんごです。

対面で描いていると「10分で似顔絵描けるなんてすごいですね!」と言われることがあります。今回はこの「10分」について考えてみます。

似顔絵を対面で描く場合、時間が限られているので1日かけて描くなんて到底無理ですよね。とりあえず2時間とかも難しい。だいたい10~20分程度を想定して、お客さまへ渡せる状態まで仕上げるのです。(もちろんもっと早く仕上げる絵描きさんもいます。)これは、本来数時間かけて仕上げたいところを、その10分で完成できるように、紙や画材などみんなかなり工夫しています。自分に合う画材を探して、情報交換したりとみんな余念がありません。でも、これって多少訓練して慣れれば、いけるような気がするんです。

でも10分で描いている絵は、実は10分で描いていないんですよ。
(なんてわかりにくい言いまわし・・・)

以前、あったやりとり。
夫のお客さまが「こんな短時間で描けるなんてすごいですね。私なら3日くらいかかっちゃうかも~。」といわれたことがありました。その方も絵を描かれるみたいなんですけど、似顔絵ではなかったようで、そういう言い回しになったようです。後日そのことを夫と話していたら、「オレは10年かけて描いてるから」っとボソっとひとこと。

おおぉー名言でた!

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似顔絵をはじめて10年間、ただ何も考えず描いてきたわけではなく、失敗した絵、うまく描けた絵、悩んだ時間、通った教室、勉強会&セミナーや大会への参加、購入した画集・・・・よりよい似顔絵を描くために、膨大な時間やお金を投資して、みんな今に至っているんですよね。似顔絵をはじめて10年だとしたら、その10年間どれだけ真摯に似顔絵に向き合ってきたか、ということです。

そしてそれをもとに、毎回全力で似顔絵を仕上げていくわけです。過去の自分の絵に対する姿勢が、今の絵に現れているといってもいい。
しかし、これ反対のことも言えますからね。もし毎回テキトーに仕上げていったら、経験が10年だろうが、結局10分で描いている絵ができる。これはこわい。。

この話は絵を描く方に限らず、ライターさんや職人さんなど技術職の方にはご理解いただけるかな、と思います~。

「10分で描いている絵は10年かけて描いています。」
こうやって胸張っていえるように、自分も日々の絵に向き合っていかなきゃなと思います。

おしまい